2008年11月7日金曜日

十二

「ちっとは、好《い》い方かね」と枕元へ坐る。
 六畳の座敷は、畳がほけて、とんと打ったら夜でも埃《ほこ》りが見えそうだ。宮島産の丸盆に薬瓶《くすりびん》と験温器《けんおんき》がいっしょに乗っている。高柳君は演説を聞いて帰ってから、とうとう喀血《かっけつ》してしまった。
「今日はだいぶいい」と床の上に起き返って後《うしろ》から掻巻《かいまき》を背《せ》の半分までかけている。
 中野君は大島紬《おおしまつむぎ》の袂《たもと》から魯西亜皮《ロシアがわ》の巻莨入《まきたばこいれ》を出しかけたが、
「うん、煙草《たばこ》を飲んじゃ、わるかったね」とまた袂のなかへ落す。
「なに構わない。どうせ煙草ぐらいで癒《なお》りゃしないんだから」と憮然《ぶぜん》としている。
「そうでないよ。初《はじめ》が肝心《かんじん》だ。今のうち養生しないといけない。昨日《きのう》医者へ行って聞いて見たが、なに心配するほどの事もない。来たかい医者は」
「今朝来た。暖《あった》かにしていろと云った」
「うん。暖かにしているがいい。この室《へや》は少し寒いねえ」と中野君は侘《わび》し気《げ》に四方《あたり》を見廻した。
「あの障子《しょうじ》なんか、宿の下女にでも張らしたらよかろう。風が這入《はい》って寒いだろう」
「障子だけ張ったって……」
「転地でもしたらどうだい」
「医者もそう云うんだが」
「それじゃ、行くがいい。今朝そう云ったのかね」
「うん」
「それから君は何と答えた」
「何と答えるったって、別に答えようもないから……」
「行けばいいじゃないか」
「行けばいいだろうが、ただはいかれない」
 高柳君は元気のない顔をして、自分の膝頭《ひざがしら》へ眼を落した。瓦斯双子《ガスふたこ》の端《はじ》から鼠色《ねずみいろ》のフラネルが二寸ばかり食《は》み出《だ》している。寸法も取らず別々に仕立てたものだろう。
「それは心配する事はない。僕がどうかする」
 高柳君は潤《うるおい》のない眼を膝から移して、中野君の幸福な顔を見た。この顔しだいで返答はきまる。
「僕がどうかするよ。何《なん》だって、そんな眼をして見るんだ」
 高柳君は自分の心が自分の両眼《りょうがん》から、外を覗《のぞ》いていたのだなと急に気がついた。
「君に金を借りるのか」
「借りないでもいいさ……」
「貰うのか」
「どうでもいいさ。そんな事を気に掛ける必要はない」
「借りるのはいやだ」
「じゃ借りなくってもいいさ」
「しかし貰う訳には行かない」
「六《む》ずかしい男だね。何だってそんなにやかましくいうのだい。学校にいる時分は、よく君の方から金を借せの、西洋料理を奢《おご》れのとせびったじゃないか」
「学校にいた時分は病気なんぞありゃしなかったよ」
「平生《ふだん》ですら、そうなら病気の時はなおさらだ。病気の時に友達が世話をするのは、誰から云ったっておかしくはないはずだ」
「そりゃ世話をする方から云えばそうだろう」
「じゃ君は何か僕に対して不平な事でもあるのかい」
「不平はないさありがたいと思ってるくらいだ」
「それじゃ心快《こころよ》く僕の云う事を聞いてくれてもよかろう。自分で不愉快の眼鏡を掛けて世の中を見て、見られる僕らまでを不愉快にする必要はないじゃないか」
 高柳君はしばらく返事をしない。なるほど自分は世の中を不愉快にするために生きてるのかも知れない。どこへ出ても好かれた事がない。どうせ死ぬのだから、なまじい人の情《なさけ》を恩に着るのはかえって心苦しい。世の中を不愉快にするくらいな人間ならば、中野一人を愉快にしてやったって五十歩百歩だ。世の中を不愉快にするくらいな人間なら、また一日も早く死ぬ方がましである。
「君の親切を無《む》にしては気の毒だが僕は転地なんか、したくないんだから勘弁《かんべん》してくれ」
「またそんなわからずやを云う。こう云う病気は初期が大切だよ。時期を失《しっ》すると取り返しがつかないぜ」
「もう、とうに取り返しがつかないんだ」と山の上から飛び下りたような事を云う。
「それが病気だよ。病気のせいでそう悲観するんだ」
「悲観するって希望のないものは悲観するのは当り前だ。君は必要がないから悲観しないのだ」
「困った男だなあ」としばらく匙《さじ》を投げて、すいと起《た》って障子をあける。例の梧桐《ごとう》が坊主《ぼうず》の枝を真直《まっすぐ》に空に向って曝《さら》している。
「淋《さび》しい庭だなあ。桐《きり》が裸で立っている」
「この間まで葉が着いてたんだが、早いものだ。裸の桐に月がさすのを見た事があるかい。凄《すご》い景色《けしき》だ」
「そうだろう。――しかし寒いのに夜る起きるのはよくないぜ。僕は冬の月は嫌《きらい》だ。月は夏がいい。夏のいい月夜に屋根舟に乗って、隅田川から綾瀬《あやせ》の方へ漕《こ》がして行って銀扇《ぎんせん》を水に流して遊んだら面白いだろう」
「気楽云ってらあ。銀扇を流すたどうするんだい」
「銀泥《ぎんでい》を置いた扇を何本も舟へ乗せて、月に向って投げるのさ。きらきらして奇麗《きれい》だろう」
「君の発明かい」
「昔《むか》しの通人《つうじん》はそんな風流をして遊んだそうだ」
「贅沢《ぜいたく》な奴らだ」
「君の机の上に原稿があるね。やっぱり地理学教授法か」
「地理学教授法はやめたさ。病気になって、あんなつまらんものがやれるものか」
「じゃ何だい」
「久しく書きかけて、それなりにして置いたものだ」
「あの小説か。君の一代の傑作か。いよいよ完成するつもりなのかい」
「病気になると、なおやりたくなる。今まではひまになったらと思っていたが、もうそれまで待っちゃいられない。死ぬ前に是非書き上げないと気が済まない」
「死ぬ前は過激な言葉だ。書くのは賛成だが、あまり凝《こ》るとかえって身体《からだ》がわるくなる」
「わるくなっても書けりゃいいが、書けないから残念でたまらない。昨夜《ゆうべ》は続きを三十枚かいた夢を見た」
「よっぽど書きたいのだと見えるね」
「書きたいさ。これでも書かなくっちゃ何のために生れて来たのかわからない。それが書けないときまった以上は穀潰《ごくつぶ》し同然ださ。だから君の厄介《やっかい》にまでなって、転地するがものはないんだ」
「それで転地するのがいやなのか」
「まあ、そうさ」
「そうか、それじゃ分った。うん、そう云うつもりなのか」と中野君はしばらく考えていたが、やがて
「それじゃ、君は無意味に人の世話になるのが厭《いや》なんだろうから、そこのところを有意味にしようじゃないか」と云う。
「どうするんだ」
「君の目下《もっか》の目的は、かねて腹案のある述作を完成しようと云うのだろう。だからそれを条件にして僕が転地の費用を担任しようじゃないか。逗子《ずし》でも鎌倉《かまくら》でも、熱海《あたみ》でも君の好《すき》な所へ往《い》って、呑気《のんき》に養生する。ただ人の金を使って呑気に養生するだけでは心が済まない。だから療養かたがた気が向いた時に続きをかくさ。そうして身体《からだ》がよくなって、作《さく》が出来上ったら帰ってくる。僕は費用を担任した代り君に一大傑作を世間へ出して貰う。どうだい。それなら僕の主意も立ち、君の望《のぞみ》も叶《かな》う。一挙両得じゃないか」
 高柳君は膝頭《ひざがしら》を見詰めて考えていた。
「僕が君の所へ、僕の作を持って行けば、僕の君に対する責任は済む訳なんだね」
「そうさ。同時に君が天下に対する責任の一分《いちぶ》が済むようになるのさ」
「じゃ、金を貰おう。貰いっ放しに死んでしまうかも知れないが――いいや、まあ、死ぬまで書いて見よう――死ぬまで書いたら書けない事もなかろう」
「死ぬまでかいちゃ大変だ。暖かい相州辺《そうしゅうへん》へ行って気を楽《らく》にして、時々一頁二頁ずつ書く――僕の条件に期限はないんだぜ、君」
「うん、よしきっと書いて持って行く。君の金を使って茫然《ぼうぜん》としていちゃ済まない」
「そんな済むの済まないのと考えてちゃいけない」
「うん、よし分った。ともかくも転地しよう。明日《あした》から行こう」
「だいぶ早いな。早い方がいいだろう。いくら早くっても構わない。用意はちゃんと出来てるんだから」と懐中から七子《ななこ》の三折《みつお》れの紙入を出して、中から一束の紙幣《しへい》をつかみ出す。
「ここに百円ある。あとはまた送る。これだけあったら当分はいいだろう」
「そんなにいるものか」
「なにこれだけ持って行くがいい。実はこれは妻《さい》の発議《ほつぎ》だよ。妻の好意だと思って持って行ってくれたまえ」
「それじゃ、百円だけ持って行くか」
「持って行くがいいとも。せっかく包んで来たんだから」
「じゃ、置いて行ってくれたまえ」
「そこでと、じゃ明日《あす》立つね。場所か? 場所はどこでもいいさ。君の気の向いた所がよかろう。向《むこう》へ着いてからちょっと手紙を出してくれればいいよ。――護送するほどの大病人でもないから僕は停車場へも行かないよ。――ほかに用はなかったかな。――なに少し急ぐんだ。実は今日は妻を連れて親類へ行く約束があるんで、待ってるから、僕は失敬しなくっちゃならない」
「そうか、もう帰るか。それじゃ奥さんによろしく」
 中野君は欣然《きんぜん》として帰って行く。高柳君は立って、着物を着換えた。
 百円の金は聞いた事がある。が見たのはこれが始めてである。使うのはもちろんの事始めてである。かねてから自分を代表するほどの作物《さくぶつ》を何か書いて見たいと思うていた。生活難の合間《あいま》合間に一頁二頁と筆を執《と》った事はあるが、興《きょう》が催《もよお》すと、すぐやめねばならぬほど、饑《うえ》は寒《さむさ》は容赦なくわれを追うてくる。この容子《ようす》では当分仕事らしい仕事は出来そうもない。ただ地理学教授法を訳して露命を繋《つな》いでいるようでは馬車馬が秣《まぐさ》を食って終日《しゅうじつ》馳《か》けあるくと変りはなさそうだ。おれ[#「おれ」に傍点]にはおれ[#「おれ」に傍点]がある。このおれ[#「おれ」に傍点]を出さないでぶらぶらと死んでしまうのはもったいない。のみならず親の手前世間の手前面目ない。人から土偶《でく》のようにうとまれるのも、このおれ[#「おれ」に傍点]を出す機会がなくて、鈍根《どんこん》にさえ立派に出来る翻訳の下働きなどで日を暮らしているからである。どうしても無念だ。石に噛《か》みついてもと思う矢先に道也《どうや》の演説を聞いて床についた。医者は大胆にも結核の初期だと云う。いよいよ結核なら、とても助からない。命のあるうちにとまた旧稿に向って見たが、綯《よ》る縄《なわ》は遅く、逃げる泥棒は早い。何一つ見やげも置かないで、消えて行くかと思うと、熱さえ余計に出る。これ一つ纏《まと》めれば死んでも言訳《いいわけ》は立つ。立つ言訳を作るには手当もしなければならん。今の百円は他日の万金よりも貴《たっと》い。
 百円を懐《ふところ》にして室《へや》のなかを二度三度廻る。気分も爽《さわや》かに胸も涼しい。たちまち思い切ったように帽を取って師走《しわす》の市《いち》に飛び出した。黄昏《たそがれ》の神楽坂《かぐらざか》を上《あが》ると、もう五時に近い。気の早い店では、はや瓦斯《ガス》を点じている。
 毘沙門《びしゃもん》の提灯《ちょうちん》は年内に張りかえぬつもりか、色が褪《さ》めて暗いなかで揺れている。門前の屋台で職人が手拭《てぬぐい》を半襷《はんだすき》にとって、しきりに寿司《すし》を握っている。露店の三馬《さんま》は光るほどに色が寒い。黒足袋《くろたび》を往来へ並べて、頬被《ほおかぶ》りに懐手《ふところで》をしたのがある。あれでも足袋は売れるかしらん。今川焼は一銭に三つで婆さんの自製にかかる。六銭五厘の万年筆《まんねんふで》は安過ぎると思う。
 世は様々だ、今ここを通っているおれは、翌《あす》の朝になると、もう五六十里先へ飛んで行く。とは寿司屋《すしや》の職人も今川焼の婆さんも夢にも知るまい。それから、この百円を使い切ると金の代りに金より貴いあるものを懐にしてまた東京へ帰って来る。とも誰も思うものはあるまい。世は様々である。
 道也先生に逢《あ》って、実はこれこれだと云ったら先生はそうかと微笑するだろう。あす立ちますと云ったらあるいは驚ろくだろう。一世一代の作を仕上げてかえるつもりだと云ったらさぞ喜ぶであろう。――空想は空想の子である。もっとも繁殖力に富むものを脳裏《のうり》に植えつけた高柳君は、病の身にある事を忘れて、いつの間にか先生の門口《かどぐち》に立った。
 誰か来客のようであるが、せっかく来たのをとわざと遠慮を抜いて「頼む」と声をかけて見た。「どなた」と奥から云うのは先生自身である。
「私です。高柳……」
「はあ、御這入《おはい》り」と云ったなり、出てくる景色《けしき》もない。
 高柳君は玄関から客間へ通る。推察の通り先客がいた。市楽《いちらく》の羽織に、くすんだ縞《しま》ものを着て、帯の紋博多《もんはかた》だけがいちじるしく眼立つ。額の狭い頬骨の高い、鈍栗眼《どんぐりまなこ》である。高柳君は先生に挨拶《あいさつ》を済ました、あとで鈍栗に黙礼をした。
「どうしました。だいぶ遅く来ましたね。何か用でも……」
「いいえ、ちょっと――実は御暇乞《おいとまごい》に上がりました」
「御暇乞? 田舎《いなか》の中学へでも赴任《ふにん》するんですか」
 間《あい》の襖《ふすま》をあけて、細君が茶を持って出る。高柳君と御辞儀《おじぎ》の交換をして居間へ退《しりぞ》く。
「いえ、少し転地しようかと思いまして」
「それじゃ身体《からだ》でも悪いんですね」
「大した事もなかろうと思いますが、だんだん勧める人もありますから」
「うん。わるけりゃ、行くがいいですとも。いつ? あした? そうですか。それじゃまあ緩《ゆっ》くり話したまえ。――今ちょっと用談を済ましてしまうから」と道也先生は鈍栗の方へ向いた。
「それで、どうも御気の毒だが――今申す通りの事情だから、少し待ってくれませんか」
「それは待って上げたいのです。しかし私の方の都合もありまして」
「だから利子を上げればいいでしょう。利子だけ取って元金は春まで猶予《ゆうよ》してくれませんか」
「利子は今まででも滞《とどこお》りなくちょうだいしておりますから、利子さえ取れれば好《い》い金なら、いつまででも御用立てて置きたいのですが……」
「そうはいかんでしょうか」
「せっかくの御頼《おたのみ》だから、出来れば、そうしたいのですが……」
「いけませんか」
「どうもまことに御気の毒で……」
「どうしても、いかんですか」
「どうあっても百円だけ拵《こしら》えていただかなくっちゃならんので」
「今夜中にですか」
「ええ、まあ、そうですな。昨日《きのう》が期限でしたね」
「期限の切れたのは知ってるです。それを忘れるような僕じゃない。だからいろいろ奔走して見たんだが、どうも出来ないから、わざわざ君の所へ使をあげたのです」
「ええ、御手紙はたしかに拝見しました。何か御著述があるそうで、それを本屋の方へ御売渡しになるまで延期の御申込でした」
「さよう」
「ところがですて、この金の性質がですて――ただ利子を生ませる目的でないものですから――実は年末には是非入用だがと念を押して御兄《おあにい》さんに伺ったくらいなのです。ところが御兄さんが、いやそりゃ大丈夫、ほかのものなら知らないが、弟に限ってけっして、そんな不都合はない。受合う。とおっしゃるものですから、それで私も安心して御用立て申したので――今になって御違約でははなはだ迷惑します」
 道也先生は黙然《もくねん》としている。鈍栗《どんぐり》は煙草《たばこ》をすぱすぱ呑《の》む。
「先生」と高柳君が突然横合から口を出した。
「ええ」と道也先生は、こっちを向く。別段赤面した様子も見えない。赤面するくらいなら用談中と云って面会を謝絶するはずである。
「御話し中はなはだ失礼ですが。ちょっと伺っても、ようございましょうか」
「ええ、いいです。何ですか」
「先生は今御著作をなさったと承《うけたま》わりましたが、失礼ですが、その原稿を見せていただく訳には行きますまいか」
「見るなら御覧、待ってるうち、読むのですか」
 高柳君は黙っている。道也先生は立って、床の間に積みかさねた書籍の間から、厚さ三寸ほどの原稿を取り出して、青年に渡しながら
「見て御覧」という。表紙には人格論と楷書《かいしょ》でかいてある。
「ありがとう」と両手に受けた青年は、しばしこの人格論の三字をしけじけと眺《なが》めていたが、やがて眼を挙《あ》げて鈍栗の方を見た。
「君、この原稿を百円に買って上げませんか」
「エヘヘヘヘ。私は本屋じゃありません」
「じゃ買わないですね」
「エヘヘヘ御冗談《ごじょうだん》を」
「先生」
「何ですか」
「この原稿を百円で私に譲って下さい」
「その原稿?……」
「安過ぎるでしょう。何万円だって安過ぎるのは知っています。しかし私は先生の弟子だから百円に負けて譲って下さい」
 道也先生は茫然《ぼうぜん》として青年の顔を見守っている。
「是非譲って下さい。――金はあるんです。――ちゃんとここに持っています。――百円ちゃんとあります」
 高柳君は懐《ふところ》から受取ったままの金包を取り出して、二人の間に置いた。
「君、そんな金を僕が君から……」と道也先生は押し返そうとする。
「いいえ、いいんです。好《い》いから取って下さい。――いや間違ったんです。是非この原稿を譲って下さい。――先生私はあなたの、弟子です。――越後の高田で先生をいじめて追い出した弟子の一人です。――だから譲って下さい」
 愕然《がくぜん》たる道也先生を残して、高柳君は暗き夜の中に紛《まぎ》れ去った。彼は自己を代表すべき作物《さくぶつ》を転地先よりもたらし帰る代りに、より偉大なる人格論を懐《ふところ》にして、これをわが友中野君に致《いた》し、中野君とその細君の好意に酬《むく》いんとするのである。

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